音楽

【音楽】山﨑明サクソフォンリサイタルツアー2023〜静寂と音の調べ(2023.10.27)〜

なつ美
なつ美
2023年10月27日(金)に、熊本県立劇場ホール ホワイエで「山﨑明サクソフォンリサイタルツアー2023〜静寂と音の調べ〜」が開催されました。山﨑明さんのサクソフォンソロ演奏とゲスト・サクソフォン江藤武大とのアンサンブルなど、アンコールを含め9曲が披露されました。なお、プログラムは、記事の最後に掲載しています。

■ホワイエに響く山﨑明さんの音色

ガラス張りの窓に反射する灯りが美しい県立劇場演劇ホールホワイエ。
そこへ、光り輝くサクソフォンを携えた山﨑明さんがゆっくりと中央の椅子に座り、無伴奏で最も有名楽曲と称される「J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番」を演奏しました。
ホワイエの静けさの中で、サクソフォンの音色、そして息継ぎやキーを押さえる音など、細やかな音まで聴こえてきました。

■サクソフォンで世界旅行体験

福岡、宮崎、大分公演を終えて迎えた熊本会場。「前回はALLオーケストラで開催したので、今回はほとんどサクソフォンのソロ演奏にしました」と山﨑さん。サクソフォンの音色をより活かすために、残響が深い会場を選んでツアーを組んだそうです。
2曲目は「H.トマジ エヴォカシオン」。「エヴォカシオンとは思い出などを呼び起こすという意味です。4つの国が登場し、ペルーの思い出は太鼓の音が聞こえてきて、ナイジェリアの思い出は鳥の鳴き声や川のイメージ、カンボジアの思い出は愛の歌、スコットランドの思い出は伝統的な楽器バグパイプの音などを表現しています。」と、山﨑さんが優しい口調でわかりやすく解説。
サクソフォンから太鼓のようなパーカッシブな音や、バグパイプのような音が鳴っていたのが驚きでした。各国違った印象と奏法に、サクソフォンの音色だけでプチ世界旅行をした気分になりました。

■サクソフォンの美しい音色をワルツで

1部の最後は「P.ボノー ワルツ形式によるカプリス」。
サクソフォンのために作られた楽曲で1番有名な作品の一つと言われる名曲だそう。
「カプリスとは気まぐれといったような意味。その気まぐれさをワルツが引き立てる楽曲です」と山﨑さん。正当法で作曲されたサックスの魅力を味わってほしいと話しました。
山﨑さんの演奏によってとても伸びやかに響くサクソフォン。残響も相まって、サクソフォンの音の美しさが引き立つ楽曲でした。

■繋がりを感じる師弟アンサンブル

2部の1曲目は、平成音楽大学の教え子でもあるサクソフォン江藤武大さんを招いて「J.M.ルクレール 二本のヴァイオリンの為のソナタ op.3 no.2」を演奏。
宮廷で流れていそうな、美しい楽曲でした。寄り添うような、追いかけ合うような、お二人の掛け合いが耳にも視覚的にも心地よかったです。音楽でもプライベートでも親交があるという山﨑さんと江藤さん。素敵な師弟関係が演奏に滲み出ていました。

■サクソフォンの知られざる音色に引き込まれる会場

師弟セッションの後は、初めて聞くような音色を味わえる3曲が続きました。
「C.ロバ バラフォン」はエチュードの中のひとつ。木琴の先祖のような楽器バラフォンを意識してつくられた楽曲です。吹きながら吸うという高度な奏法で、木琴がなっているような、打楽器がなっているような演奏を披露。
山﨑さんは「サクソフォンは音色がたくさんあり、他の楽器になりきることも多い」と教えてくれました。
次は、和な楽曲「野田暸 即興曲Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」。雅楽の表現が含まれる楽曲で、目を閉じているとサクソフォンであることを忘れてしまうほど、日本古来の笛のような音を感じました。
「B.コックロフト ロック・ミー!」について、山﨑さんは「ビートボックスのようなリズムのある楽曲」と説明してくれました。ビートを刻みながら音を奏でるという超高度奏法、素晴らしい技術のオンパレード。手に汗握る超難曲たちをすらすら吹きこなす山﨑さんの姿に、爽快感さえ覚えました。

■ジャズを感じるサクソフォン、そしてアンコール

最後はジャズサクソフォンからクラシックにした楽曲「V.モロスコ ブルー・カプリス」を披露。1部3曲目のワルツ形式によるカプリスとリンクして面白かったです。ジャジーな部分とクラシカルな部分が混ざっていたのも新鮮でした。
アンコールは、「ヘンデル メサイヤより 一人のみどりごが我らのために生まれた」。
ゲストでもあり教え子でもある江藤さんがもうすぐお子様が生まれるということもあり、この曲を二人で演奏してコンサートは終演しました。

【感想】

山﨑さんの演奏力に加え、1曲ずつ説明もあり、サクソフォン初心者でも楽しめるリサイタルでした。
何より驚いたのは、透き通った美しい音色はもちろん、世界各国の伝統的な楽器やビートボックス、うなるようなジャジーな音などサクソフォンの音色の幅広さ。
ホワイエの残響もすばらしく、静寂だからこそ感じられる音の響きが心地よかったです。
山﨑さんのサクソフォンへの愛と尊敬を感じる、素晴らしいライブでした。

■ライブ後インタビュー

なつ美
なつ美
今日はいかがでしたか?

<山﨑さんのお話>
県立劇場コンサートホールホワイエの響きはすばらしいですね。お客様もかなり集中して聴いてくださいました。ありがとうございました。

なつ美
なつ美
福岡、宮崎、大分とまわられていますが、今回のツアーの感想をお聞かせください。
<山﨑さんのお話>
基本的にサクソフォンのソロ演奏なので、特に響きを重要視しました。会場ごとに響きが違うので、それに合わせてセッティングを変えるなどしました。
そして、静寂だからこそお客さまの力が必要。お客さまと一緒に作り上げてきたツアーだと思います。

プログラム

  1. J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲第1
  2. H.トマジ エヴォカシオン
  3. P.ボノー ワルツ形式によるカプリス
  4. J.M.ルクレール 二本のヴァイオリンの為のソナタ op.3 no.2
  5. C.ロバ バラフォン
  6. 野田暸 即興曲Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ
  7. B.コックロフト ロック・ミー!
  8. V.モロスコ ブルー・カプリス
  9. ヘンデル メサイヤより 一人のみどりごが我らのために生まれた

※ 撮影は、許可を得て行っています。