■響き合う3つの弦楽器
会場いっぱいに集まったお客様の拍手を受けながら、煌びやかな衣装で登場した黒木真子さん(Violin)と辰野陽子さん(Viola)、中川幸尚さん(Cello)。
コンサート主催の中川幸尚さんから、挨拶と曲紹介がありました。
「1つ目はシューベルトの弦楽三重奏曲です。1楽章しかない単一楽章で、シューベルトは2楽章を途中でやめたそうです。シューベルトの未完成交響曲も3楽章してやめているので、シューベルトは飽きっぽい方なのかもしれませんね。」と中川さんの話に会場は引き込まれます。
「美しい曲です、お楽しみください」と中川さん。三人が向き合う形で演奏が始まりました。
目と息を合わせる三人。各々の息遣いを感じながら、美しく優雅な三重奏に酔いしれました。
■珍しい弦楽三重奏という構成
2つ目は、5つの曲からなる弦楽三重奏曲のためのセレナードハ長調 Op.10。
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの弦楽三重奏はマイナーな構成で、曲数もそんな多くないのだとか。
「ネットで検索しても全く出てこない曲ですが、面白い曲です。」と中川さん。
かっこいい勢いのある演奏で始まりました。伸びやかな黒木さんのヴァイオリンの旋律と、中川さんのチェロのベースラインが素敵。
高音と低音を行き来し、心地よく響く辰野さんのヴィオラ。2曲目は壮大かつ激しい演奏でした。
少しダークな雰囲気の3曲目。4曲目はゆったりとした楽曲と思いきや激しくなったり、ゆっくりと流れていったり、緩急のある楽曲でした。
そして5曲目は、最後にふさわしい明るい楽曲。演奏後の、三人の笑顔が印象的でした。
■主役が移り変わり、混ざり合う
2部はベートーベンの弦楽三重奏曲 第2番ト長調 Op.9-1。
中川さんより、「一般的にはマイナーですが、弦楽三重奏の中ではメジャーな楽曲です。ベートーベンが27歳で作曲。弦楽四重奏曲を作るために、準備として作曲された三重奏といわれています。」との解説がありました。
力強く優雅な1曲目。主人公が入れ替わるように、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが主線を渡していき、呼応するようにハーモニーを奏でる感じがとてもいい。
2曲目は低音が心地よく響き、3曲目は食事中に聴きたい心地よい楽曲でした。
4曲目は素敵なフレーズが印象的で、脳内に映画の情景が映し出されるような美しさがありました。
最後は各楽器が畳み掛けるように、そして呼応し、絡み合いながら、フィナーレを迎えました。
大きな拍手の中、コンサートは終演しました。
【感想】
初めての弦楽三重奏でした。主役が入れ替わっていく楽しさ、そして音域の違う弦楽器の音の重なりが心地よかったです。
主催のチェリストゆっきーこと中川幸尚さんの曲紹介が面白く、クラシックに詳しくない私でもとても楽しめました。
~プログラム~
Franz Schubert (1797-1828)
弦楽三重奏曲 第1番変口長調 D.471
(1816)
Ernst von Dohnanyi (1877-1960)
弦楽三重奏曲のためのセレナード ハ長調Op.10
(1902)
Ⅰ : Marcia
Ⅱ : Romanza
Ⅲ : Scherzo
Ⅳ : Tema con variazioni
Ⅴ : Rondo
-休憩(15分)-
Ludwig van Beethoven (1770-1827)
弦楽三重奏曲 第2番ト長調 Op.9-1
(1798)
Ⅰ: Adagio-Allegro con brio
Ⅱ : Adagio, ma non tanto, e cantabile
Ⅲ: Scherzo; Allegro
Ⅳ : Presto
※写真は許可を得て撮影