音楽

【音楽・詳細】山﨑明サクソフォンリサイタルツアー2024『静寂と音の調べⅡ』に行ってきました。 (2024.11.19)

江津山
江津山
熊本白川教会で開催された山﨑明サクソフォンリサイタルツアー2024『静寂と音の調べⅡ』に行ってきました。ゲストはピアノの宮城さくらさんです。

第一部 サクソフォン独奏
J.S. バッハ/無伴奏チェロ組曲 第2番

 バッハ作曲の6曲からなる無伴奏チェロ組曲第2番をサックスの独奏で演奏されました。無伴奏ということもあり、フレーズの一つ一つや音を丁寧に大事に演奏されているように感じました。曲によってロマンティックだったり、少し激し目でも落ち着きがあったり、嘆かわしく朗々と歌うように演奏されたりなど様々な場面がありました。サックスの響きがチェロとはまた違った味を出していたのではないかと思います。静寂の使い方や息使いがとても良く感じられました。

E.v. コック/モノローグ 第4番

 北欧の作曲家コックによるサックスの独奏のために作られた「モノローグ 第4番」は、日本ではあまり演奏される機会は少ないそうです。物憂げな旋律が空間を支配し、音の深く深くに入っていくようでした。後半は少しアグレッシブな動きになり、トリッキーな音とリズムが繰り返されました。表現力と精神性の高い楽曲だと感じました。


J.S. バッハ/パルティータ イ短調 BWV1013

 ソプラノサックスで演奏されました。また曲の雰囲気が変わり、バロック音楽の堅実さと神聖さが現れているようでした。切り詰めた空気と優しさの両方が兼ね備えてあったと思います。速い連符がとても聴き取りやすく、ソプラノサックスの高い音の中でも抑揚の幅の広さを感じました。

B. コックロフト/Ku Ku

 今回の第一部のプログラムの中では一番現代の曲で、非常に趣向を凝らした新鮮な楽曲だったと思います。霧のかかった中に超絶技巧が繊細にふんだんに盛り込まれ、強烈な意志を持って歌っているようでした。ニワトリの鳴き声を表現されている部分もあり、鳴き声の音の出し方が奇々怪怪で凄かったです。普段は聴けないサックスの初めて聴く音が聴けました。


第二部 ゲストとの共演
J.S. バッハ/フルートソナタ ト短調 BWV1020

 フルートソナタをソプラノサックスでピアノの宮城さくらさんと演奏されました。山﨑さんは、この曲はオーボエの音が合うと仰っておられ、演奏もオーボエの音色に似ていたと思います。ピアノとの美しいハーモニーや対旋律の掛け合いが印象的で、コロコロと動くトリルの音が心地よかったです。なだらかでゆっくりと歌う部分は夢見心地で、勢いのあるところはとても華やかでした。

八木澤教司/ヘリオドール

 ヘリオドールという天然石があり、太陽からの贈り物と呼ばれ、人生を切り開く力があるそうです。最初は心に残る歌のようなフレーズが続き、アップテンポに変わり冒険に出かけるように希望を持って音楽が前に進みました。途中無伴奏で物悲しく訴えるようなサックスソロの後、また立ち直り憂鬱を取り除くような前向きなエネルギーを感じさせる場面へと進みました。

J. イベール/物語

 イベールの代表的ピアノ曲で、10曲の短い小品から成っており、今回はサックスとピアノの編曲で5曲演奏されました。プログラムには山﨑さんの作られた詩も掲載されており、詩の朗読と共に演奏されました。

「金の亀を操る人」

 優しく、物憂げに始まり少し遠いところで情景を眺めているようでした。流れるようなメロディーは神秘的なものを感じました。


「小さな白いロバ」

 穏やかでもありながら疾走感もあり、伸びやかなところと細かいところの差がしっかりとしていました。おどけたようなアクセントの付き方も面白かったです。

「バホラメサ(テーブルの下)」

 軽快で躍動感もあり、且つおしゃれで緊張感も走る場面も見受けられました。ピアノの投げかけにサックスが応えているようでした。

「クリスタルの籠」

 慌てている感じとうっとりするように歌う場面の緩急が激しく、短い曲の中で様々な表情が伺えました。

「水売りの女」

 水の雫やしたたり、また波紋のようなピアノの音にサックスの叙情的なメロディーが乗っかっているようでした。個性的で摩訶不思議な雰囲気でした。

山﨑明/Miyabi JYONGARA

「Miyabiでは篠笛、龍笛などからのインスピレーションとサクソフォンの特殊奏法を組み合わせ、音色の変化も巧みに使いながら独特な世界観を歌い上げ、そこから更に津軽三味線の津軽じょんがら節六段をベースにサクソフォンで三味線の力強さを表現したJYONGARAへと繋がり展開していく。」(プログラムに記載された山﨑さんの解説より)山﨑さんご本人作曲で、無伴奏のサックス独奏の曲でした。Miyabiでは雅楽の笛の強烈な響きや音の切り替えでピッチをわざと乱し音階が揺れる様を巧みに表現されており、面白く聴きごたえがありました。JYONGARAは三味線のバチバチとした音が非常に再現度が高く、サックスの可能性はとても広いと思いました。和の雰囲気や少しおどけた感じも良かったです。

■アンコール

 アンコールはEarth,Wind &Fireの「September」を演奏されました。

※撮影は御承諾済です。