今回の記事を担当する ”いずみ” です。よろしくお願いします!

<Part1 志娥慶香作品(1986~2025)>
蘇峰(2003)
2003 年頃作曲の蘇峰です。
開演一曲目は阿蘇の山にそよぐ風をイメージして作られた「蘇峰」。
FM 熊本「朗読 声の贈り物」でも 20 年以上使用されている志娥さんにとって「始まり」ともいえる曲なのだとか。
曲調はゆるやかで優しい曲で、壮大な大地に守られるような安心感、ふるさとの安心感、愛情を感じさせてもらえるような一曲でした。
12 歳の情景(1986)
志娥さんが 12 歳の時に作曲された曲です。
作品はミステリアスな感じで始まり、リズムや速度、曲調がどんどん移り変わっていくような工夫が凝らされた作品となっていました。
演奏前に話された志娥さんの幼少期のお話もあり、当時 12 歳の志娥さんの心の奥底で何かが少しずつ変化し成長していく過程のようにも捉えられました。
穀雨(2010)
この曲のテーマは「春の恵みの雨」で、後に映画にも使われた曲とのことです。
しとしと雨が降るような音形から始まり、雨が降って風が吹いて、雨の恵みを受けた畑、そこからの生命の芽吹きなど色々な情景を連想させてくれるような曲でした。
凪(2011)
この曲を作曲中に東日本大震災が発生し、後にこの曲は「祈り」の思いが込められた曲となりました。
穏やかな曲調の中に、高音のメロディーが響きます。優しい言葉で語りかけられるような、そんな気持ちになりました。
三つの雲(2022) 映画「あの子の夢を水に流して」
骨なし灯籠(2023) 映画「骨なし灯籠」
続いて映画音楽の二曲が演奏されました。
2022 年作曲の「三つの雲」は熊本の球磨川が舞台となる映画「あの子の夢を水に流して」の曲
2023 年作曲の「骨なし灯籠」は熊本の山鹿を舞台する映画「骨なし灯籠」の曲です。
コンサートでは映画音楽を作るまでのエピソードを聞くことができたり、曲の中に聞き馴染みのある旋律が隠れていたりと遊び心も感じる作品でした。
春めぐる(2025)
第一部の締めくくりは2025 年作曲の「春めぐる」です。この曲は宮崎県立芸術劇場のプロジェクト「の、まど」にて作られた曲が元になっている作品です。
春夏秋冬と季節がめぐる中、この曲のテーマは「春」
春を迎えられることは奇跡、人々の生活の中でお祭りがあったり植物が「にょっきにょっき」と芽吹く嬉しさを素直に表したようなメロディーが繰り返されました。
一つのメロディが表情豊かに変化していく様は、人々の和が広がる様子にもイメージが重なり、心がじんわりと温かくなるような、そんな感動を覚えました。
<Part2 フィンランドの音楽と慶香作品>
第二部では志娥さんのフィンランドでの旅のお話を交えつつ、フィンランドで親しまれている曲のアレンジ作品と今回の旅を機に新たに作曲されたオリジナル作品を演奏されました。

サトゥマー
Composed by Unto Mononen, Arr. Keiko Shiga
サトゥというのは日本語でいうとおとぎの国という意味で、この曲には「おとぎの国のような夢の国に行きたいな」という思いが込められた曲だそうです。
この曲の拍子は4 分の4 拍子。ですがこの曲でダンスを踊る時には4 分の 3 拍子で踊るとのこと。ダンスに慣れるまではとても難易度の高い曲なんだそう。ハッキリとしたベースが特徴的に進む曲でした。
サッキヤルヴェン・ポルッカ
Finnish Folk Song, Arr.Keiko Shiga
サッキヤルヴイという村のポルカです。
全体的にアップテンポで楽しくなるような曲でメロディの装飾も華やかな曲でした。
フィンランド人は普段からあまり感情を表に出さない人もいる中、歌や踊りでは思いきり表現することが好きという国民性も知ることができました。
カルヤラン・クンナイッラ
Finnish Folk Song, Arr. Keiko Shiga
この曲はカレリア地方 カレリアの丘を舞台にした曲です。フィンランド人にとって魂の風景、心の奥底に響く故郷への愛を思い起こすような曲です。
日本人の心にも響く、優しい旋律が印象的でした。
白夜の白樺並木(2025)
Composed by Keiko Shiga
フィンランドの知人のおうちで子どもが生まれた際に、木の苗を植え、子どもの成長と共に木が育ちそれが年月を経て立派な白樺の並木になるのだとか。
日本にもよくある、木を一本植えるとかではなく、並木として植えることには志娥さんも驚いていらっしゃいました。
旋律の表情がうつり変わる様子は人生の中での良い時、そうでない時、頑張る時様々な事を通して成長していく様子とも重なるような一曲でした。
コケマキ川、夏の黄昏(2019)
Composed by Keiko Shiga
この曲は志娥さんのフィンランド滞在中のミラクルのような体験から生まれた作品です。
志娥さんの滞在中フィンランドは太陽が沈まない白夜だったのとこと。太陽の現象で白地にピンクや青が入り混じったような不思議な光が湖の水面やどこまでも続く麦畑に反射した時、それはそれは美しかったといいます。今回のコンサートでは、実際に足を運ばないと経験できないその美しい風景を、私たちも演奏を通して体験させて頂きました。
オン・ヘツキ
Composed by Rauno Lehtinen, Arr. Keiko Shiga
人生には色々な時がある。恋に落ちる時、生まれる時、思い出してみたら、素晴らしい「時」だ。という思いが込められた曲とのことです。優しく包み込まれるようなメロディがすっと心に入ってくる、あたたかな曲でした。
故郷~フィンランディア賛歌
Composed by Teichi Okano, Jean Sibelius, Arr.Keiko Shiga
最後に、世界平和という願いも込めて日本の「故郷」そしてフィンランディア賛歌 のメドレ ーで締めくくりでした。
今回演奏していただいた作品、そして丁寧に語られたお話の数々を通して、自然の恵みや季節のうつろいを愛おしく感じたり、遠くフィンランドを旅しているような気持ちになったり
と、とても豊かで心あたたまる時間を過ごすことができました。
素晴らしい作品の魅力が、これからもさらに多くの方に届いていくことを願っています。そしてまた、演奏を聴ける日を心から楽しみにしています。
<志娥さんへのインタビュー>
1 本日のコンサートを振り返って
皆さんに50 周年をお祝いして頂き嬉しかったです。ありがとうございます。感謝の気持ちでいっぱいです。
2 50 周年記念で振り返るこれまでの音楽生活
やっぱりアメリカに留学した苦労が1 番の転機だったと思います。あそこで頑張ったから今があると思います。でもやっぱり、今が 1 番です。
3 このコンサートの直前に行かれたフィンランドでの一番の思い出
白夜であったこと。白夜だからこそ実際の時間が夜中だろうと、外に遊びに行くという生活の変化。サウナが大好きな国民性等色々な事をお話しいただきました。
4 映画「骨なし灯籠」の熊本でのロングランについて一言
これほど長くなるのは驚いています。(コンサート当日の)今日も鹿児島で監督が上映頑張 っています。
5 今後のコンサートや活動の予定
フィンランド旅行を機にした曲をあと4 曲ほど作曲したいと思っています。その曲ができたら CD アルバムを作りたいと思っています。あと、来年2026 年は最初にフィンランドに行ってから10 年目となるので、何か記念になることをできないかなと思っています。
※ 今回の写真は、全て江嵜靖治様が撮影されたもので、許可をいただいて使用させていただきました。