【音楽・詳細】アンサンブル「こおろぎ」創立40周年記念演奏会!(後編 街の歌)《2025.11.29》
<第2部 街の歌>
第2部「街の歌」
静謐な雰囲気の第1部から一転、第2部では白と黒の装いから民衆風の衣装へと着替え、明るく活気ある世界が舞台に広がりました。
まるで修道院を出て街の広場へと足を踏み出したかのような、色彩豊かな雰囲気の変化が印象的でした。
バラータ「よく晴れた春の日」
中世イタリアで親しまれた舞曲形式「バラータ」の一曲。春の訪れを喜ぶ情景が描かれています。
今回の演奏は、明るい季節の息吹を感じさせる力強い歌声が魅力で、リズムの躍動がまるで街の人々の足取りのように生き生きと響きました。
ヴィルレー「そは終わり」
フランスの世俗歌曲であるヴィルレーは、語りかけるような旋律と素朴な親しみやすさが特徴。
この曲では、心に寄り添うように進むメロディが印象的で、物語のワンシーンをそっと語るような静かな味わいがありました。
カノン「夏は来たりぬ」
中世イギリスの代表的な輪唱曲として広く知られる名曲。「夏の到来」を祝う明るい歌です。
演奏では、付点のリズムが軽やかな陽気さを生み、声が重なるたびに初夏の生命力が会場に広がるようでした。自然と心が弾むような、軽快な一曲となりました。
モテトゥス「アレルヤ」
中世ポリフォニーの特色がよく表れた一曲で、「アレルヤ」の歓喜の言葉を様々な声部が彩ります。
こちらも付点のリズムが際立ち、どこか民族色のある躍動感が特徴的でした。多声が絡み合いながら響くことで、祝祭のような高揚感が生まれていました。
ジョスカン・デ・プレ「E grillo」ころおぎという歌
歌詞は「コオロギは良い歌い手だ」「他の鳥とは違って、いつも歌っている」といった内容で、コオロギをユーモラスに称賛しています。
言葉も多く、リズムの変化も多い曲だと感じた。こおろぎが可愛らしく感じるような曲でした。
ジョン・ダウランド「Come again」
16世紀末イギリスを代表する作曲家ジョン・ダウランドは、多くの美しいリュートソングを残したことで知られています。
その中でも《Come again》は、伸びやかに流れる旋律が特に魅力的な一曲です。
女声と男声が織りなすハーモニーがとても美しく、声が重なるたびにため息が出るほどの透明感がありました。
ダウランド特有の甘く切ない世界観が、会場の空気をやわらかく包み込むように響き、静かに心揺さぶる時間となりました。
クラウディオ・モンテヴェルディ「Ecco mormorar fonde」
タイトルの意味は「ほら、波がささやいている」で、歌詞の内容を音楽で生き生きと描写した、ルネサンスからバロックへの過渡期におけるモンテヴェルディの特徴的な作品の一つです。
森の朝のようなみずみずしさを感じられる演奏でした。
ジョスカン・デ・プレ「Mile regrets」
歌詞の内容は、愛する人から離れ離れになることへの深い悲しみと苦痛を歌っており、その別離によって「まもなく命がつきるだろう」と感じるほどの心情が表現されています。
クレマン・ジャヌカン「Le Chant des oyseaux」
鳥の鳴き声や自然の音を模倣した描写的なシャンソン(世俗的な歌)です。特に、複数の声部がそれぞれ異なる旋律を歌う多声的な音楽で、それぞれの声部が違う旋律を歌うことから沢山の鳥が鳴いているようにも感じられました。こんなに沢山の鳥が一緒に生活して色々と話しているなんて可愛すぎますよね。
沢山の声部があることから難易度が高いのではないかと思いました。
アンコールではエリックウィテカー作曲のシングジェントリーを演奏され、演奏会の幕を閉じました。
優しく、感動的、そして非常に美しいハーモニーが特徴の、「優しく歌う」というタイトル通りの名曲です。世界中が困難な時期に作られ、希望と癒やしを与えてくれるようなそんな演奏に会場の雰囲気も柔らかくなり、音楽の素晴らしさ、歌声の癒しを最後まで堪能できる時間となりました。
最後に、熊本のこんなに身近なところで「中世・ルネサンス期」の音楽を聴くことが出来たことは思いがけない出来事でした。
教会に響く歌声と、そこに込められた人々の祈りは本当に美しいものです。
昔からこのように人々が祈りを捧げてきたということはとても感慨深く思います。
また是非演奏をお聴きしたいと思いますし、本場での演奏も気になるところです。

□

写真はご提供いただいたものを使用。

