寺本昌弘さん(トロンボーン)と北村明日香さん(ピアノ)が出演されました。
今回のコンサートは、トロンボーンのために書かれた作品だけの構成で、聞き応え満点の全6曲を演奏されました。ソロ楽器としては一般に馴染みのないトロンボーンによる未体験の音楽会となりました。なお、プログラムは記事の最後に掲載しています。
○寺本昌弘さんの紹介
熊本市に生まれる。中学校で吹奏楽に出会い、高校までチューバを愛するブラス少年と化す。熊本大学工学部に進みトロンボーンに転向。トロンボーンを村岡淳志、花坂義孝。萩野昇、ミッシェル・ベッケの各氏に師事。
2004年、第1回日本トロンボーンコンペティション<一般の部/独奏部門>に出場し第1位を獲得。Willie’s Custom Brassからカスタムマウスピース”Libra”シリーズをリリース。2015年から4年連続してソロコンサートツアーを行い、東京・大阪・名古屋・福岡・長崎・熊本で17公演を催した。
現在ソフトウェアプロダクション技巧堂代表、日本アマチュアブラスアンサンブル組織(NABEO)代表、寺本トロンボーン塾主宰。
■オープニングは【ボリバル(E.クック)】でコンサート開演
8分の6拍子と4分の3拍子を交互に繰り返す中南米イメージの快活な音楽。しかしながら作曲者は英国人というのも一興です。
■【変ホ短調の小品(J.G.ロパルツ)】
ピアノの重々しい序奏で始まるフランスの音楽です。
作曲したロパルツは音楽学校の校長で、この曲は学生の卒業試験のために作ったという。トロンボーンの奏法やテクニックを織り込んで意地悪に作った、寺本さん曰く「正統な作品」だそうで、寺本さんもこの曲を吹けるようになるまで10年ほどかかったそうです。速いパッセージで寺本さんの技巧が光る一曲でした。
■変拍子の移り変わりが特徴的な【アローズ・オブ・タイム(R.ピースリー)】
(寺本昌弘さん)「変拍子は、わざと調子を外すような、聴いている側からするとちょっと乗りにくくなるような側面もあるんですが、この曲に至っては、変拍子があまりにも激しく、8分の4・5・6・7・8・9・10、それから4分の3・4・5・6と、これが目まぐるしく変わるようにできております。どこが変拍子なのかが分からないというくらい、曲の作り方が上手いんです。」
アメリカの作曲家ピースリーは3つの楽章から成るこの曲を仕上げる際に、ジャズ界の名手ジム・ピューとニューヨーク・フィルハーモニック主席奏者ジョセフ・アレシの二人に助言を仰いだそうです。アップテンポで、ジャズ感が前面に出たカッコいい演奏でした。
■前半最後は【アリアとポロネーズ 作品128(J.ジョンゲン)】
(寺本昌弘さん)「ピアノをされる方ならポロネーズは馴染みがあると思いますが、トロンボーンではおよそ馴染みがないんです。2年前くらいに、ポロネーズとは何なのかと、ショパンの名手の北村明日香さんに相談しに行きまして、レクチャーをたっぷり受けました。」
(北村明日香さん)「まず、ポロネーズという言葉は、ポーランド風という意味の言葉で、民族舞踊の1つなんです。一般的にワルツといったら、3拍子の中の1拍目が一番強いんですが、ポロネーズの場合は、3拍子の中の2拍目にアクセントが付く独特の力強いリズムを持ったワルツなんですね。」
ポロネーズの説明を挟んだ後に演奏。ゆったりと奏でる前半のアリアと上品な躍動を感じさせる後半のポロネーズの組み合わせが絶妙です。
<プログラム>
- ボリバル(E.クック)
- 変ホ短調の小品(J.G.ロパルツ)
- アローズ・オブ・タイム(R.ピースリー)
- アリアとポロネーズ 作品128(J.ジョンゲン)
- トロンボーンとピアノのためのソナタ(E.イウェンイゼン)
- 協奏曲「リトルカウボーイ」(A.ディロレンツォ)
――アンコールーー
夜のしじまに
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