■3人で紡ぐ、隠れたベートーベンの名曲
笑顔で登場したゆっきーことチェロ奏者の中川幸尚さん。「知らない方の多い作品かもしれませんが、本当に素晴らしい楽曲なので楽しんでいただけたら嬉しいです」と語り、コンサートが始まりました。
1曲目はベートーヴェンの「幽霊」。幽霊という曲名の由来は諸説あるそうで、マクベスの魔女のシーンに転用しようとしていた説と、第二楽章がおどろおどろしく幽霊感があるので名付けられた説があるとのこと。
ピアノ志賀総学さん、ヴァイオリン柴田恵奈さんも登場し、3人ですっと息を合わせて第一楽章がスタート。
軽やかな志賀さんのピアノと、なめらかなメロディーを奏でる柴田さんのヴァイオリンと中川さんのチェロ。
3人の旋律が会場に響き渡ります。
第二楽章は低音が印象的なゆったりとした悲しげなメロディー。確かに、幽霊という曲名が似合う旋律でした。
盛り上がりと静けさの緩急。音の波に揺られるような演奏に圧倒されました。
明るく軽やかに始まった第三楽章。
クライマックスに向けてのピアノ、ヴァイオリン、チェロの交互の掛け合いが素晴らしかったです。
ベートーベンが脂の乗っている中期の作品ということもあり、聞き応えのある1曲でした。
■重厚感のある情熱的な演奏
2曲目は「重くて、暗いですが情熱的で好きな楽曲です」と中川さんが語る、
ドボルザークがチェコ時代に作曲した作品。
第一楽章は重厚な低音から始まり、静けさや情熱が入り乱れた、変化のある旋律が印象的でした。
印象的なピアノと、ヴァイオリン&チェロのリズムが複雑に絡み合う第二楽章。
彩度が高く、宮廷にいるような優雅さもあり、個人的に一番好きな楽章でした。
中川さんが好きだという第三楽章。ピアノとチェロで始まり、チェロの切ない音色が会場を包み込みました。
ヴァイオリンも加わり、弦楽器のハーモニーとピアノが第三楽章のストーリーを紡ぎます。
第四楽章は、最初からトップギアでスタート。
情熱的で、楽曲と楽器の力強さをひしひしと感じさせる演奏に、手に汗握りました。
クライマックスから最後の一手までの迫力ある演奏は圧巻。
演奏後のMCで、「中川さんのおかげで知った楽曲。演奏して好きな曲となりました」と志賀さんと柴田さん。
3人を大きな拍手が包み込み、コンサートは終演しました。
【感想】
ピアノ三重奏は初めてでしたが、軽やかに駆け回るピアノと、優しく力強いヴァイオリンとチェロの演奏のコラボレーションに惹きつけられました。
隠れた名曲というだけあり2曲とも知りませんでしたが、解説の後に生演奏を聴けるので、室内楽ビギナーの私でも細部まで楽しめました。
クラシックに造詣の深い中川さんならではのコンサート。また足を運びたいと思いました。
~セットリスト~
~プログラム~
Ludwig van Beethoven
(1770-1827)
ピアノ三重奏曲 第5番 二長調「幽霊」作品70-1
(1808)
I : Allegro vivace con brio
II : Largo assai ed espressivo
III : Presto
一休憩(15分)一
Antonin Dvorák
(1841-1904)
ピアノ三重奏曲 第3番 へ短調作品65
(1883)
I : Allegro ma non troppo
II : Allegretto grazioso
IIII : Poco Adagio
V : Finale ; Allegro con brio
※写真撮影は御承諾いただいております。