第一部
メンデルスゾーン/序曲「フィンガルの洞窟」ロ短調 Op.26
なだらかな音の動きから始まり、洞窟に入る前の期待や不安を表しているようでした。
管楽器を幅広く使っており、海の広大さ、勇敢さを感じその後の弦楽器の美しい情緒的なメロディーには心を打たれました。また、ベースやティンパニのアクティブな動きによって曲全体が煽られたりなど様々な場面で力強さも感じました。クラリネットのソロもあたたかく良かったです。凪のように穏やかになったり、水面に映る光の反射でキラキラしている情景が見えたり、ショッキングな音などもでてきて海や洞窟の底知れない深さと怖さ、また感銘を受けている様子などさまざまな表現が伺えました。マエストロの竹内さんの穏やかな表情で指揮をされている姿にもとても安心感を感じました。
ベートーヴェン/交響曲第7番 イ長調 Op.92
第1楽章 Poco sostenuto-Vivace
第2楽章 Allegretto
第3楽章 Presto,Assai meno presto
第4楽章 Allegro con brio
第1楽章 Poco sostenuto-Vivace
オーボエソロや管楽器が鳴り、弦楽器が応え交互に共鳴し合い、弦楽器同士の掛け合いなどがありました。細かい動きはあれど大きくフレーズをとっており、雄大なイメージを序盤は持ちました。その後華々しい馴染み深いモチーフになりました。弦の力強い輝かしいこの旋律は、誰もが好意的な印象を持つのではないでしょうか。
第2楽章 Allegretto
ヴィオラ、チェロ、コントラバスなどの暗いうめきの後、物悲しい美しいメロディーが歌われました。ゆりかごのようなベースの上に、いろんな楽器がそれぞれの思いを歌っているようでした。弦楽器のピッツィカートと管楽器が交互に語り合う様子がとても美しかったです。
第3楽章 Presto,Assai meno presto
2楽章と変わり、軽快に音楽が進みました。強弱のコントラストが印象的でした。軽快でテンポ良く進む部分や、大きくゆったり穏やかな場面を行き来しながらも、足取りは前向きで一つのゴールに向かっているようなエネルギーを感じました。
第4楽章 Allegro con brio
終楽章は、輝かしくも厳格で革命的な雰囲気を感じました。今までの楽章の中では一番激しく、盛り上がりを見せいろんな楽器の音が活かされていました。オーケストラと指揮者の一体感が凄かったです。
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 変ホ長調 Op.73
第1楽章 Allegro
第2楽章 Adagio un poco moto
第3楽章 Rondo:Allegro,ma non troppo
第1楽章 Allegro
オーケストラの壮大な和音の後、ピアノの嬉々とした華やかなカデンツから始まり、そしてまた美しいオーケストラのターンにバトンタッチされ最初から感動しました。ピアノの宝石のようにキラキラと輝かしい音と音楽に包まれ、高音と弦楽器のアンサンブルは不思議の国に来たようでした。穏やかな部分や、圧ある部分もありましたが総じて輝かしい雰囲気だったと思います。
第2楽章 Adagio un poco moto
うっとりするような優しい弦楽器の前奏はハーモニーの美しさが非常に引き出ていました。ピアノの一つ一つの音が上から雫のように落ちて、一気に会場をあたたかな空気に変えました。オーケストラとピアノがお互い相乗効果を起こし、どんどん優しくなり溶け合っていくようでした。
第3楽章 Rondo:Allegro,ma non troppo
前楽章の最後に暗示された主題がピアノで力強く提示されました。テンポも上がり、大きく盛り上がりました。軽やかに歌われたり、激しく主張されるさまざまな展開でも、優しさと愛をとても感じました。
アンコールはピアノ独奏で、チャイコフスキーのノクターン嬰ハ短調を演奏されました。
オーケストラは音楽を丁寧に丁寧に作られている印象で、マエストロの息遣いや表情で何を表現されたいのかがとても伝わりました。ゲストコンサートミストレスの船津さんもオーケストラを引っ張っていき、音楽作りの熱に拍車をかけているようでした。ソリストの若林顕さんの見てわかるもの凄く難しい動きを難なくこなされる絶対的に揺るがない基礎力はもちろん、音色や曲の作り方持っていき方と、表現の仕方に感銘を受けました。右手も左手も一つ一つの音をとても大事に弾かれ、全部が宝物のように演奏されているように感じました。
※原稿確認はいただいております。