<1部>
~若い芽の演奏~
J.S. バッハ:トッカータとフーガ d-moll BWV565
オルガン 楠田美保さん
冒頭は一度は聴いたことがある衝撃的なフレーズから始まり、そこからどんどん展開していき様々な連符や和音を駆使していました。パイプオルガンのみの音で演奏され、重厚で神秘的な世界を表現しておられました。
牧野由多可:十七絃独奏による主題と変容「風」
箏 川元柚乃さん
しんとした空気の中、風のゆらぎを感じる一音一音が染み渡りました。テンポアップし激動したかと思えば、また気まぐれにゆらぎ、速度や音質も変わりたくましさも感じ風の変容を表現されていました。
P. サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン op.20
ヴァイオリン 小野田香音さん ピアノ 菊川朋香さん
フレッシュながらも渋い音も表現され、哀愁漂う雰囲気の場面を見事に自分のものにされていました。速いパッセージは目まぐるしくも一筋の線を真っ直ぐに描くような真っ向な演奏でした。
J.S. バッハ:トッカータ D-dur BWV912
ピアノ 廣畑湧亮さん
弾き始めからとても濃厚な音色で、規律を重んじながらも艶やかで鮮やかでした。それぞれの構成音も非常にバランスがよく、とても聴きやすかったです。細部の表現にもこだわりを感じ、バッハの音楽の良さが伝わりました。
~ミュージカル「ひとりぼっちの夜」~
作詞ひらたあやさん、作編曲・ピアノ樹原孝之介さんによる2部構成のミュージカル「ひとりぼっちの夜」を今回の演奏会用に脚本を手がけられ、ダイジェストで演奏されました。
出演はピアノ樹原孝之介さん、ナレーション政木ゆかさん、オーボエ石田栄理子さん、ヴァイオリン柴田恵奈さん、ソプラノ金戸愛香さん、谷口奈津実さん、メゾソプラノ兼武尚美さんです。
「Overture」(ピアノ、オーボエ、ヴァイオリン)穏やかな流れの中にリズミックで爽やかなメロディーがとても心地よかったです。「月の子守唄」(ピアノ、メゾソプラノ、ソプラノ)子守唄ながらも勇気づけてくれるような素敵なメロディーと歌詞でした。「星の点消夫」(ピアノ、オーボエ)可愛らしくも優しくオーボエの音色がより曲のあどけなさを引き立てていました。ピアノのキラキラとしたパッセージも印象的でした。「空の機織り」(ピアノ、ソプラノ)高音がとても際立って歌われ、美しく伸びやかで色彩豊かでした。「雲の子」(ピアノ、ソプラノ、ヴァイオリン)曲名の通り雲行きがあやしい雰囲気で、悲壮感に漂っていました。「命の引取り人」(ピアノ、ヴァイオリン)ジャジーでおしゃれであり、大人っぽく優美な音楽でした。「ひとりぼっちの夜」(奏者全員)みんなに寄り添ってくれるような心温まる曲で、サビの気持ちが込み上げるような盛り上がりは心を潤してくれるようでした。
<2部>
~ふるさとを想う~
ゲストの里地帰さんが、日本人楽器製作家と共に独自で創られた「和胡(わこ)」という楽器で演奏されました。日本の杉や欅、和紙などを使用して製作されたそうです。出演は和胡 里地帰さん、ピアノ千田有希子さんです。
「もののけ姫」
和胡の音が非常に曲の世界観に合い、音の切りや伸ばしも和胡独特の音で聴きごたえがありました。
「雷馬」
厚みと疾走感もあり、馬の駆け上がる表現や鳴き声が工夫されており非常にわかりやすかったです。一筋一筋の音の強弱やスピード感が一瞬で変化していました。
「旅愁」
伴奏なしのマイクなしの生音で演奏されました。柔らかくも端正で、芯のある音色が美しかったです。日本の曲ととても相性が良く、歌っているようにも聴こえました。
永遠のタンゴ~ピアソラから愛を~
今回全てのプログラムをタンゴで有名なアストゥル・ピアソラの楽曲で演奏されました。曲目は「ミケランジェロ70」、「天使の死」、「オブリビオン」、「鮫」、「デリカシモ」、「悪魔のロマンス」、「アディオス・ノニーノ」です。いくつか抜粋して感想を述べさせていただきます。
出演はゲストのバンドネオン川波幸恵さん、ゲストのコントラバス小野としたかさん、ピアノ小野田美緒さん、ヴァイオリン龍野マリエさん、チェロ龍野しずくさんです。
「ミケランジェロ70」
重厚でエッジの効いた迫力のある始まりで、虎視眈々と狙いを定めているような雰囲気もとてもかっこよかったです。一瞬でピアソラの空気感に変わりました。
「天使の死」 それぞれの楽器の旋律が呼応し合い、息を呑むような緊張感の中バンドネオンの余裕を持った歌いと、艶やかな伴奏が印象的でした。
「鮫」
ビシビシと伝わる張り詰めたリズムとそれぞれの思惑を訴えるようなメロディーが鮫のように追い詰めてくるようで、とても聴きごたえがありました。
「悪魔のロマンス」 落ち着いており大人っぽくもありながら、弦の音で何かを惑わすようでとても不可思議な気持ちになりました。ゆったりとしたパッセージの中にもどこか熱い意志を感じました。
「アディオス・ノニーノ」 ピアノのカデンツァのような幻想的なソロから始まり、熱くテンポアップし歴然とした主題のようなパッセージを繰り返されいました。考え深いヴァイオリンのソロや、地底を呻くようなアンサンブル、張り詰めた音、包み込むようなチェロなど様々な表情が伺えました。それぞれの熱演がこちらまで心を熱くさせました。
アンコールは「リベルタンゴ」を演奏されました。


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