【音楽・詳細】アンサンブル「こおろぎ」創立40周年記念演奏会!(前編 聖堂の響き)《2025.11.29》
取り上げる音楽は「中世・ルネサンス期」の音楽です。
会場は日本福音ルーテル健軍教会。美しい音色が会場いっぱいに響き渡ります。
今回は、その前編となります。
<第1部 聖堂の響き>
第1部「聖堂の響き」
グレゴリオ聖歌~「Ave Maria」「Ave maris stella」
男性ソロから始まり、教会全体に柔らかい響きが響き渡りました。
こおろぎは必ず練習のはじめにグレゴリオ聖歌を歌われており、とても大事にされているとのことです。
オルガヌム「全能の父なる神よ」
西洋音楽における多声音楽(ポリフォニー)の起源の一つとされ、単旋律であったグレゴリオ聖歌に、和声的な要素が加わった画期的な作品です。
男声の重厚感のある響きがとても印象的で厳かな雰囲気に包まれました。
「地上のすべての国々は見た」
ペロティヌスが作曲した史上最古の四声曲とされる、ノートルダム楽派の作品です。男声の響きの上を女声が柔らかく包み込み、一つの旋律から複数の声部が重なる美しさを堪能することのできる演奏でした。
モンセラートの朱い本~「OVirgo splendens」
この曲は14世紀末にスペイン・カタルーニャ地方のモンセラート修道院で編纂された写本『モンセラートの朱い本 (Llibre Vermell de Montserrat)』に収められている楽曲の一つです。
今回の演奏会ではセルパンと共に演奏され、セルパンの音色が旋律をそっと支えているような、歌声もセルパンの音色も両方楽しむことができました。
13世紀イギリスのモテトゥス 「In te Domine」
13世紀のイギリス音楽の特徴をよく表した多声(ポリフォニー)の声楽曲です。
旋律的で親しみやすい響きが特徴的で、心地よい響きに包まれました。
ここでセルパン奏者の東金ミツキさんによるソロ演奏が行われました。
まずセルパンという楽器の名前にはヘビという意味があり、まだあまり知られていない、レアな楽器とのこと。インターネットでセルパンと調べても、蛇が出てくるくらい珍しい楽器というエピソードも交えて話されました。
1600〜1750年代バロック時代にフランスの教会で使われ始め教会でしか使われなかったことから、しばらくは他の国に伝わることがなかったのだとか。
会場全体に響くあたたかくまろやかな音色に来場者はうっとりとしていました。
パレストリーナのモテトゥス「Sicut cervus」
ルネサンス音楽を代表する作曲家パレストリーナによる名曲で、静かな祈りが水面に広がるように流れていく美しいモテットです。
今回の演奏では、旋律に豊かな動きがありながらも、全体として柔らかく溶け合う響きが印象的でした。声と声が自然に寄り添い、清らかなテキストの世界観を一層引き立てていました。
ウィリアム・バード「3声のミサ」
16世紀イギリスを代表する作曲家ウィリアム・バードによる「3声のミサ」は、シンプルな編成ながら深い表現力を持つ作品です。
演奏では、やわらかく伸びやかに広がる歌声が会場を包み込み、まるで空間そのものが呼吸するかのような温かい響きが生まれました。
とくに、声部同士が自然に絡み合いながら進んでいくさまは、西洋音楽が単旋律から複雑な多声音楽へと発展していく過程を体感できるような、歴史の流れを感じさせる時間となりました。
•休憩◆



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