■阿蘇のように壮大なVientoサウンド
森や自然を彷彿とさせるステージに、ホールいっぱいのお客様。
Vientoのお二人が登場し、1曲目は「よき日に」、そして「断崖の翼」を演奏されました。
竹口美紀さんが奏でる阿蘇を想わせる壮大な音楽に、吉川万里さんの笛が交わり、共鳴し、会場を包み込みます。
物語を紡ぐような吉川さんの語り。
「人間の心が見える時に大きく躍動する。それがビエントを続けてよかったという瞬間です。ありがとう」と話しました。
■母と子のものがたり
吉川さんから、若くして亡くなられたちぎり絵作家の方のお話がありました。
「My Mother」は、竹口さんがその子の温かい作品を見ながら作った曲だそう。
「子どもとの別れ、時間が解決するというのは嘘。心が割れて血が流れる人は、数十年で癒されることはない」と力強く語り、「My Mother」を演奏。
舞うように演奏する竹口さんが印象的でした。
やさしい子が親を思うような曲だと吉川さんが言っていたとおり、やさしく温かく、切ない楽曲でした。
■鮮やかなバラの底に眠る水俣の記憶
世界のバラ会議が開かれるほど、多彩なバラが咲き誇るエコパーク水俣。
「しかしそこには、人と人を分断した悲しみの記憶があります。命よりだいじな経済なんてあってたまるか。忘れるものか、忘れさせるものか」と、吉川さんは強い口調で語りました。
組曲「Minamata」の第一楽章「記憶」には、黒い衣装のT.V.P.のダンサーが加わり、水俣で起きた出来事を表現しているようでした。
第三楽章「Minamata」には、合唱団みなまたの6名が参加し、声が加わることでより重厚に。決意を感じさせる、壮大な演奏でした。
「いのちの歌」をVientoのお二人と合唱団みなまたで演奏し、一部が終わりました。
■ステージに花を添える子どもたち
二部の最初はアリとキリギリス。
ミニマムズのかわいらしい歌と踊りに、ステージがパッと晴れやかに。
本来はアリのような計画性と勤勉さが大切だというお話ですが、今回は違いました。
蓄えた食物だけでは何かが足りない。そこに光を射したのはキリギリスの音楽。
「生き方は違うけど尊くて素晴らしい、それぞれの生き方でいいじゃない」というメッセージに、心打たれました。
「Bamboo」では、子どもたちが登場。バチで竹をリズミカルに叩くかっこいい演舞を披露しました。
■女性の太鼓で迫力を増すステージ
吉川さんが「素直な演舞が観客を魅了する」と称した、女性和太鼓オリジナルパフォーマンス集団「肥ノ國太鼓衆真紅舞」。
真紅舞は竹口さんアレンジの「さくらさくら」で演舞をしており、やっと実現した共演の舞台だそう。
Vientoさんの音色に太鼓が加わりさらに躍動感が増した「息吹」。
「さくらさくら」は、4人で中央の太鼓をひらり舞いながら叩いていく。女性ならではのしなやかさとかっこよさに魅了されました。
お次は真紅舞の十八番だという「暁天」。
全員がかつぎ太鼓で一列に並んで叩く迫力満点の演舞に、大きな拍手が沸き起こりました。
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■おかげさまの26周年、心ある音楽を届けていく
吉川さんは、こう伝えてくれました。
「テレビやラジオなど電波にのることはないですが、
わざわざ足を運んでくださる皆様の想いだけで、26年間やってこられました。
おかげさまで生きていけます。力になります。
AIも曲は作れますが、心はありませんから。
心のここに(胸を指して)、この言葉を使って、舞台をしていきます。
懲りずにあきらめず、これからもこの道を歩んでいきます」
会場からどっと湧き起こる拍手。
最後に「戦人絵巻」を演奏し、大きな拍手の中、リサイタルは幕を閉じました。
【感想】
大地、風、草原。それはまさに、雄大な阿蘇そのものを聞いているかのような音楽でした。
そこに加わるT.V.P.やミニマムズの子どもたち、そして肥ノ國太鼓衆真紅舞。
それぞれが歌い舞い、奏で創り出すVientoワールドに引き込まれたリサイタルでした。
~プログラム~
<Ⅰ>
- よき日に
- 断崖の翼
- My Mother
- 組曲「Minamata」
1)記憶
2)海の深呼吸
3)Minamata - いのちの歌
<Ⅱ>
- アリとキリギリス
- 光の楽園
- Bamboo
―Viento&真紅舞― - 息吹
- さくらさくら
- 暁天(ぎょうてん)
- 戦人絵巻
【出演】
Viento
吉川万里
竹口美紀
T.V.P. Ayumi Kanoko Sana Futo
ミニマムズ Kanata Yui Yukina Aoi Momona Saori Lento
肥ノ國太鼓衆真紅舞
合唱団みなまた
※ 今回の写真は、全て江嵜靖治様が撮影されたもので、許可をいただいて使用させていただきました。