第一部
A. アルチュニアン/A. ババジャニアン:アルメニア狂詩曲
アルチュニアンとババジャニアンの共作で、「アルメニア狂詩曲」を演奏されました。アルメニアの民族の独特の音階とリズムがとても特徴的でした。とても安らかでなだらかな音の層が重なり、誇りを持った雄大な大地を連想させました。後半は軽快で激しく、美しい音の渦がぐるぐると渦巻いているようでした。最後は一気に盛り上がり、解き放たれたような開放感を感じられました。
S. ラフマニノフ:幻想的絵画Op.5より 夜-愛 涙 復活祭
この曲はラフマニノフがそれぞれの詩から得たインスピレーションを基に絵画的に作曲された作品だそうです。
・夜-愛
「ナイチンゲールの高いさえずりが
枝から聞こえる時刻に、
恋人同士の誓いあう囁きが、
穏やかな風や近くの水音が、
孤独な者の耳に音楽となる。」
一つ一つのアルペジオが美しく、ナイチンゲールのさえずりのような音も印象的で、あたたかい少し不可思議な雰囲気に包まれました。
・涙
「人の懸念、おお、人の涙!
お前は朝から晩まで流れ、
人知れずに、目に見えずに、
無限に、無数に流れる、
まるで土砂降りの雨のように、
秋の夜の深遠の中に流れる。」
雨垂れのように物悲しいメロディーと、音の波が寄せては返すようでした。静かに曲が閉じましたが、余韻が残るような哀愁あるれる楽曲でした。
・復活祭
「強大な鐘の音が大地を超えて鳴り、
大気のすべては嘆き、おののき、苦しむ。
美音の銀色の雷鳴は、
聖なる勝利の知らせを告げる。」
鐘の音が主として鳴り響いている最中、下の方でいろいろなものがうごめいていたり、主張しているようでした。アグレッシブで力強く厚みのある響きが印象的でした。
E. ワインライヒ:波の下のプロメナード
海と海に住む生き物を守ろうという意を込めて作られた楽曲だそうです。「海へ散歩に行きましょう」とワインライヒさんも呼びかけておられました。音や連符が沢山動き、様々な生き物がはびこっているようでしたが、アクアリウムに行ったような海の中の静かさと落ち着きを感じました。カホンアレンジもされており時折リズミックでカッコよかったです。
J. シュトラウスⅡ:『ワルツカプリッチョ』美しき青きドナウ
クラシックで有名な「美しき青きドナウ」は今回連弾で演奏されました。優雅でピアノならではの音の遊びや運び方が美しかったです。また途中ブギウギアレンジや、魔法使いの弟子のフレーズを盛り込まれたり、グリッサンドのパフォーマンスをされたりなどまた違う角度からのドナウが聴けて面白かったです。
第二部
G. ガーシュウィン:ラプソディー・イン・ブルー
ドラマでも有名となったクラシックとジャズとブルースが融合された「ラプソディー・イン・ブルー」はこちらも連弾で演奏されました。曲の途中や特に冒頭部分はためやゆらしが多いですが、完璧に息がぴったり合っており聴いていて心地よかったです。おしゃれで愉快痛快で、そしてやわらかい場面やパワーのこもった熱演など、最後までずっと楽しかったです。
F. リスト:交響詩第2番『タッソ』
「タッソ」とはルネサンス期の叙情詩人だそうです。この曲は一つの映画のようになっており、3つのテーマに沿って続けて演奏されました。
・嘆き
重低音が重なり重苦しく始まりました。激動の後、また重い足取りになったりなど、さまざまなモチーフを使って嘆きを表しているようでした。
・優遇
拍子感や音色が一気に変わりステップを踏んでいるようでした。綺麗な音の花びらが舞い踊っているような雰囲気でした。切迫し圧ある部分もあり対照的でよかったです。
・勝利
練習曲のようなキビキビとした技巧的にも難しそうな部分もありました。英雄のテーマソングのように勇気と誇りを感じ、フィナーレにふさわしい圧巻の演奏でした。
アンコールはワインライヒさん作曲の「城」とピアソラ作曲の「リベルタンゴ」を演奏されました。「城」は曲の雰囲気も幻想的で非常に良かった上に、打楽器のマレットでピアノの中を叩いて不思議な音を出したり、弦を指で弾いたりなどされとても面白く新鮮な楽曲でした。
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